━声のない言葉 村里の猫と二人の女



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♪音を喜ぶ耳と音楽の構造を知的に楽しむ耳を...♪声のない言葉 村里の猫と二人の女.....♪
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蝋梅の紅さす君に風とMarie



*2004年03月25日の日記を再UPいたしております。





シイちゃん(78歳)掲載写真の猫の焼き物はシイちゃんの作品です。

「この歳まで生きてくると、いい話だけを聞きてえであります。たいていのせつねえ話は聞き飽きたもんでありますからなあ」
                        ~「阿弥陀堂だより」のおうめ婆さんのせりふ。



栃木県は益子町。焼き物のふる里・・益子から車で10分ほどの所に樋口美世子さんの本鈴頭窯は窯を構えています。今では少なくなった登り窯を持つ美しき陶芸家です。
広々とした田園風景も、四季折々の美しい自然も、古い佇まいの民家も、かつて何度か訪れたことがあるような気がしますし、一昔前の里村って感じの素朴さがまだあってほのぼのしてきます。誰でも自然のふるさとに行けば人間らしい心に戻れるという当たり前のものであります。それこそ私のように都会で病んだ心の持ち主が、自然の中や、人との出会いによって癒やされ、こうした心の故郷のような自然の中で死ねれば事実であれ錯覚であれ幸福でありましょう。私にとっては第二の故郷のような所でいつも彼女の家を訪れることを楽しみにしています。



<声のない言葉>

その美世子さんの家で、ふしぎな老婆に出会いました。二年ほど前でしょうか、炬燵に入ってお茶をご馳走になっていた時、突然ガラス戸がするすると開いて一人の老婆が無言で上がりこんできました。私は何事が起こったのかと吃驚しましたが、美世子さんは老婆にお茶を淹れて黙って渡してます。老婆は一口お茶を啜ると、両手の人指し指で鼻の両脇に当てシュシュと猫のヒゲみたいな真似をしてます。見ると美世子さんも同じような動作で返しています。何か呆気に取られて彼女達を見ていた私は、思い当たりました。「え、手話?」老婆は一生懸命何事かを訴えているようです。
見たこともない手話でした。老婆はしいちゃんという名前で、しいちゃんは外見では判断できない産まれついて聴覚のない聾唖者(ろうあしゃ)だったのです。

美世子さんは、
「えへ、二人だけの手話なの。この前猫が車にはねられ可哀想だったの。でも元気になったみたい。」
どうも猫を好きで何匹も野良猫を飼っているしいちゃんと、「カムイ」という名の猫を飼っている美世子さんとは、猫の様子を伝え合う為に自然な形で言葉の代わりに、耳の代わりにこの不思議なコミュニケーションを始めたそうです。掲載写真の猫の焼き物はシイちゃんの作品です。

<「聾」とは耳が聞こえないということ、聾の中に「耳」がありますね。「唖」とはしゃべれないということです。唖の字の中に「口」がありますね。つまり「聾唖者」とは、耳が聞こえなかったり、お話ができない人のことです。> 
 
耳が聞こえない、言葉がしゃべれない、そんな事はみんな頭の中では分かっている。が、その本質はなかなか分からない。聾唖者の方が、仕事疲れでアパートでぐっすり眠って、朝起きたら、アパートの周りが火事で大騒ぎになっていたそうです。耳が聞こえないという事は、生命に関わる事なのです。耳に変るものは何もないのです。
ヘレン・ケラーは「この世界(社会)は、音と、言葉で成り立っている」といった。

















<本鈴頭窯 登り窯>
信楽、備前、益子といった窯元でも、年々少なくなっている登り窯ですが、その姿を本鈴頭窯では見ることができます。登り窯は、山の斜面を利用して作った窯です。その形は、雪でつくる鎌倉が斜面にポコポコと何個か連なった姿を想像してください。



一番下の窯(窯口)から焚いた炎と熱が 順に各部屋を上昇していき焼き上げます。30~40時間、昼夜兼行で行われます。燃料は昔ながらの薪(主に赤松)です。灰の掛かりや炎のあたり具合で作品の色合いが変わるなど独特の味わいがあります。



厳選した赤松を、約半年間乾燥させ、それを3日3晩で焚き尽くす!登り窯で焼くと作品に炎があたって、表側と裏側が違った表情に焼きあがります。火に向かった側には自然釉(灰)がかかりやすく、変化が出やすいのですが、裏側によい景色が現れることもあります。こうした薪で焼成を行うことによって焼き物に有機的な輝きを与えるため、登り窯ならではの風合いに安らぎを求める人は多いといわれます。



火を止めてから、2~3日後、窯詰め出入り口のレンガを崩し窯出しをします。一番期待と不安が過ぎる一瞬です。





<本鈴頭窯 約1280度の瓦斯窯(ブタンガス)>





尖がったゼンゲルが倒れてくると約1250~1300度ぐらい。





道祖神(どうそじん)
美世子さんの愛猫「カムイ」も昨年4月8日に亡くなりました。もうすぐ一周忌です。上記の見事な造形を持った猫はシイちゃんの作品です。
春がもうそこまで来てます。山間の村で美世子さんもしいちゃんももう二人は美しい自然の一部だ。
*2004年03月25日の日記を再UPいたしております。
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シイちゃんの創作した猫は、ここ「ふるさと」さんで取り扱っております。
『陶器とお食事どころ故郷FURUSATO』





「ふるさと」さんでは、作品を畳の上に置いて開放的に展示しています。気づけば濱田庄司、加守田章二、木村一郎の作品が足元にあり、思わず正座して見入ってしまいました。とんでもなく懐の深いご主人がいて、温かく迎えてくれます。



「茶房」では、美味しいコーヒー、甘茶、大豆煮、自家製ケーキや、自然なみずみずしい食菜を使った玄米ご飯の食事をお楽しみいただけます。自然がくれる本来の『おいしさ』を味わうことができ、身体だけでなく、心まで元気にしてくれます。





◇2004.12.12 オカリナXmasコンサート◇

『陶器とお食事どころ故郷FURUSATO』

栃木県芳賀郡益子町道祖土3370-2
 TEL:0285-72-9668
 E-Mail:m_furusato@tiara.ocn.ne.jp




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